鑑賞とは能動的な音楽活動

音楽鑑賞とは音楽を「きく」ことです。

日本語では「きく」という音は、「聞く」と「聴く」とに書き分けられて、人が「きく」という活動を、音に向かい合うときの心の態度によって使い分けて区別しています。

聞く・・・うわさを聞く、聞き捨て、聞き流す、聞く耳持たぬ、話し声を聞く、物音を聞く

聴く・・・音楽を聴く、講義を聴く、国民の声などを聴く

また、英語で「きく」という言葉は、hearlistenが使われますが、その使い分けを考えると

・音楽をきくこと=To listen to music

・声をきくこと=To hear a voice

・ラジオをきく=Listen to the radio

・耳を澄ませてきくこと=To listen carefully

・叫び声をきくこと=To hear a scream

上の例を見てわかるように、Hear=聞くlisten=聴く、として使い分けられていることがわかります。

 

★この段階までの話で、音楽鑑賞における「きく」態度を整えることを指導し、鑑賞の時間は「心の静けさ」が必要であることを訴えます。

・きこえてくる音を、ただ単に認識するだけではなく、深く内容を理解しようとする積極的な心の態度が必要。

・皆さんが、大衆浴場で湯船に入る前に、かかり湯で身体を清めずにドボンと入るような、マナーに反する態度を慎むように、鑑賞している音楽空間(=教室など)で私語をしたり物音を立てたりしてははいけない。

 

芸術音楽の価値を生徒に示す

英語で「鑑賞」という言葉はAppreciation(アプリシエイション)と言います。

この言葉の中には「価値を判断する」という意味があり、好意的に進んで物事の評価をしようという態度もうかがえる言葉です。
そこから、「感謝」という意味にもつながっているのでしょう。

音楽の「ききかた」をListen(聴く)という能動的な態度にして、加えてその音楽の中に、素晴らしいもの、優れたもの、魅力的なもの、カッコいいこと、嬉しいこと、美しいものetc.を自らが求めながら音楽と向かい合うことが大切です。

そして、その中の一つでも自分が見つけることができたら、素直な心で喜ぶことが大切なのです。

小さな草花のたとえ

芸術の価値とはこのようなものです。

今から3人の登場人物が、何れも同じ名もなき「野の花」に対して向き合うときの「心の在り方」をたとえ話で表わしてみます。

宴会でお酒に酔っぱらって帰宅する途中の、あるおじさんバージョン

ある日、会社の忘年会で散々お酒を飲んで酔っ払ってしまい、終電に間に合わずに高いお金を出してタクシーで自宅まで戻っている途中のおじさん。
タクシーに揺られていると、気分が悪くなって「運転手さん、あの先の草むらの横でちょっと止めてくださいよ。」と頼んで、千鳥足で草むらに入っていき「オエッ!!」とやってタクシーに戻っていったとします。その時にヘッドライトがその草むらに咲く、きれいな野の花を照らし出して、おじさんの目には草花が見えていましたが、お構いなしに踏んずけていきました。

 

夕食の買い物を終えて戻る途中の、あるお母さんバージョン

ある日、近所のスーパーから夕食の買い物をして歩いて帰る途中のお母さん。
草むらの横の道端にさしかかった時でした。「あら~きれいな花が咲いているわね!とってもかわいい!少しだけ摘んで流しの端に生けておきましょう。」そう言って草花を摘み、エコバックに入れた食材の上にのせて帰りました。
ところが帰り着くと、小学高から我が子が帰ってきていたのですが、靴は脱ぎ散らかし、ランドセルは放り投げて、ひっくり返ってポテトチップを食べながらTVで漫画を観ていました。そのだらしない姿に、かんかんに怒って「あんたは何度言ったらわかるの!?宿題してから遊びなさいって言ってるでしょ!もうだらしない!!!」と怒鳴って、子どもを2回に追いやり、ぶつぶつ言いながら夕飯の支度を始めました。数日後またスーパーに買い物に行こうと思い、エコバックを手にしたら、底には萎れた野の花が入っていました。「あ~、あの時に飾ろうと思って摘んだんだったわね・・・。」そう思いながらゴミ箱に捨てました。

 

保育園の遠足で近くの広場に出かけたとこの、ある女の子バージョン

その日は指折り数えて待っていた遠足の日でした。お昼になって、どの子もお母さんから詰めてもらった可愛いキャラ弁を美味しそうに食べています。
「さて、みんなそろそろ食べ終わったかな?」保育士の先生は子どもたちに「ごちそうさま」をさせた後に、しばらくの時間、その原っぱで遊ばせることにしました。そこにはきれいな草花が所々に咲いていたので先生は大きな声でこう言いました。「みなさ~ん!きれいなお花を見つけたら、摘んで先生のところに持ってきてちょうだい!保育園に持ち帰って一緒に飾りましょう!」子どもたちは先生が大好きだから、いっせいにはしゃぎながらわれ先にと次々に花を摘んで先生に花を届けます。ある小さな女の子がいました。
その子はみんなが先に立派な花を摘んでしまい、先生が喜んでくれるようなきれいな立派な花が見つけることができません。悲しくてとうとう泣きだしてしまいました。あたりを見回して、ちょっぴり怖いけど、深い草むらに分け入ってみました。そうしたらナントいうことでしょう!!!(何かの番組のようですね)       そこには、きれいに咲いた野の花が咲いているではありませんか。女の子は、その花を大切に摘んで、優しく微笑む大好きな先生に手渡しました。

◎さあ皆さんはどう思いましたか?

★このたとえ話を通して、野の花(=芸術作品)の存在が、人の心の在り方や、おかれた環境で価値を変えてしまうということを話し、芸術を大切に受け止める心の尊さを伝えます。

草花を見た時に抱いた3人の価値観の相違

⇒ おじさんの価値感=認識はするが価値は限りなくゼロ(0)

⇒ お母さんの価値感=一定の価値はあるが、自分が持つ全ての価値観の中では優先順位が低い

⇒ 女の子の価値観=その瞬間は、世界中の何よりも大きな価値感を抱いた

◎皆さんが芸術に触れることにより、「目の前の素晴らしいものに対して、心から感激して素晴らしい」と思える、そのような心を育てることが大切です。

 

 

【 鑑 賞 】

それではここで、素晴らしい曲を一曲鑑賞してみましょう。

・まず音楽を聴く心を備えてください。そして響いてくる音楽に多くの価値(美しさ、清楚さ、純粋さetc.)を見出だし、音楽の世界を味わいながら、それを喜ぶ自分自身を見つけてください。

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ジャコモ・プッチーニ作曲 ミサ・ディ・グローリアより「キリエ」

おススメ:指揮 ミシェル・コルボ  リスボン・グルベンキアン管弦楽団&合唱団